藤舎の紋 藤舎名玄TOSHA MEIGEN ― 西洋音楽の一覧へ
WESTERN MUSIC ON SHINOBUE

家路(新世界より 第2楽章)Largo

Antonín Dvořák(1841–1904) アントニン・ドヴォルザーク
Symphony No. 9 “From the New World” — II. Largo / 交響曲第9番『新世界より』第2楽章(前半)

家路(新世界より 第2楽章)の絵
アルバート・ビアスタット『ヨセミテ渓谷の日没』1868年
作曲
1893年、ニューヨークで。同じ年の12月16日、カーネギー・ホールで初演(アントン・ザイドル指揮、ニューヨーク・フィルハーモニック)
原曲の編成
管弦楽(この旋律を吹くのはイングリッシュ・ホルン)
調・拍子
変ニ長調・4分の4拍子・Largo(とてもゆっくり。4分音符=52)
この楽譜
第2楽章のうち、「家路」の旋律が歌われる前半(1〜45小節)。旋律は、Brandon Amaro 浄書の総譜(パブリックドメイン)から入力し、Simrock 社の初版(1894年)と照らし合わせた。ピアノ伴奏は、管楽器の和音と弦楽器をまとめた編曲

楽譜

三本半調子・四本調子・四本半調子(古典調)の笛の運指で書いています。原曲と同じ変ニ長調で、1オクターブ上を吹きます。三本半調子は 一 がおよそラ♭(ソ♯と同じ音)の笛で、曲のド(レ♭)が「四」に乗るので、旋律がほとんど開いた指で出ます。×の運指は4か所です。一 の高さが近い四本調子・四本半調子でも、同じ指で吹けます。笛の高さは気温や湿気で変わるので、季節やその日の笛の調子によって、伴奏と合う笛を選んでください。小さな数字は、伴奏に合わせるときのメリ・カリの目安です(実測した三本半調子の値。笛によって前後します)。ピアノやギターの伴奏は、原曲のままの高さ(A=440Hz)で、そのまま合わせられます。

楽譜 1ページ目楽譜 2ページ目
⎙笛の楽譜(PDF)A4・2ページ ⎙ピアノ伴奏付きの楽譜(PDF)A4・3ページ ⎙ギター伴奏付きの楽譜(PDF)A4・3ページ ⎙標準の運指(一=ド、八本調子前後)の楽譜(PDF)A4・2ページ ⎙曲目解説(PDF)印刷して、楽譜に添えて
運指の読み方
一 二 三 … 七
呂音(りょおん。低い音)
1 2 3 … 7
甲音(こうおん。一段高い音)。呂と同じ指で、息を強めます
点の付いた 2・3、8
大甲(だいかん。さらに高い音)。8 は大甲のド
数字の右上の ×
半音下げる指づかい(穴の一部を塞ぐ)。塞ぐ量は運指表をご覧ください
赤い ↑ ↓
その音だけ1オクターブ上げて/下げて吹く(笛の音域に収まらない音)
筒
筒音(すべての穴を塞ぐ)

お稽古用の音源

伴奏に合わせて吹くための、コンピュータで鳴らした音源です。「笛の旋律入り」で旋律を覚え、「伴奏だけ」で合わせて吹いてみてください。高さは A=440Hz で、このページの楽譜と同じ調です。三本半調子・四本調子・四本半調子の笛なら、楽譜の運指で、音源に合わせてそのまま吹けます(音源の笛の旋律は、1オクターブ下で鳴っています)。楽譜の繰り返しも、そのとおりに演奏しています。

音源
笛の旋律
速さ
合う笛三本半調子・四本調子・四本半調子(古典調)一 がラ♭(=ソ♯)に近い笛。季節によって選ぶ
この音源を保存(MP3)

音源は、MuseScore Studio の音色(Muse Sounds)で、楽譜から作りました。藤舎名玄の演奏ではありません。

作曲者

アントニン・ドヴォルザークは、いまのチェコ、プラハに近いネラホゼヴェスという村に生まれました。若いころはオーケストラでヴィオラを弾きながら作曲を続け、ブラームスに才能を認められて、『スラヴ舞曲集』で広く知られるようになりました。

ボヘミアの民謡や踊りのリズムを生かした、親しみやすく温かい音楽が持ち味です。『新世界より』のほか、『チェロ協奏曲』、弦楽四重奏曲『アメリカ』、歌曲『わが母の教えたまいし歌』、ピアノ曲『ユーモレスク』などで知られます。

曲の成り立ち

1892年、ドヴォルザークはニューヨークのナショナル音楽院に院長として招かれ、およそ3年間アメリカで暮らしました。そこで黒人霊歌や、アメリカ先住民の音楽に関心を持ち、アメリカの新しい音楽はこうした歌をもとに生まれるだろう、と語っています。

交響曲第9番は、1893年の1月から5月にかけて書かれました。『新世界より』という題は、ドヴォルザーク自身がつけたもので、「新世界(アメリカ)から故郷へ送る便り」のような意味がこめられている、とよくいわれます。

第2楽章について、ドヴォルザークは初演のころの新聞の取材に、ロングフェローの長い詩『ハイアワサの歌』の、森の中の弔いの場面から想を得た、と語っています。旋律は民謡のように聞こえますが、借りてきた歌ではなく、ドヴォルザーク自身の作です。

のちに、ドヴォルザークの弟子だったウィリアム・アームズ・フィッシャーが、この旋律に歌詞をつけて『Goin' Home(家路)』という歌にしました。日本でも「遠き山に日は落ちて」などの歌詞で歌われ、夕方を知らせるチャイムとしても親しまれています。

曲調と聴きどころ

楽章は、木管楽器と金管楽器の、ゆっくりした和音で始まります。第1楽章のホ短調に近い響きから、いくつかの和音を経て、遠い変ニ長調へと静かに移っていきます。続いて、弱音器(音を小さく柔らかくする道具)をつけた弦楽器が、そっと和音を敷きます。

その上で、イングリッシュ・ホルンが「家路」の旋律を歌います。イングリッシュ・ホルンは、オーボエより低く、少しくすんだ温かい音の木管楽器です。旋律は、ほとんどが ド・レ・ミ・ソ・ラ の5つの音でできていて、日本の童謡や民謡にも通じる、なつかしい響きがあります。

旋律の終わりは、クラリネットやヴァイオリンが、こだまのようにやさしくくり返します。笛で吹くときも、急がずに、遠くへ呼びかけるような気持ちで、長い音をていねいにのばしてください。この楽譜はここ(45小節)までですが、原曲はこのあと、嬰ハ短調の中間部をへて、ふたたび「家路」の旋律に戻り、はじめの和音で静かに閉じます。

曲の流れ

小節の番号は、このページの楽譜の小節番号です。

小節内容
1〜6前奏。管楽器の和音が ppp から f へふくらみ、ホ長調の響きから変ニ長調へ移る。5小節から、弱音器をつけた弦楽器がそっと入る(笛は休み)
7〜10イングリッシュ・ホルンの独奏で「家路」の旋律が始まる。「ミ・ソ・ソ、ミ・レ・ド」
11〜14旋律の中ほど。少し高い所で、クラリネットが下で寄りそう。p と mf の間で、ゆるやかに揺れる
15〜18はじめの旋律が戻る。17小節から高まって、18小節で f になる
19〜21クラリネットが、旋律の終わりを pp で、こだまのようにくり返す
22〜26管楽器の和音が高まり、25小節で ff の山。26小節で静まって、弦楽器へ受け渡す(笛は休み)
27〜35第1ヴァイオリンが、旋律の中ほどを歌う。チェロが下で別の旋律を重ねる。32・33小節で高まり、35小節で静まる
36〜39イングリッシュ・ホルンが、はじめの旋律をもう一度歌う。38小節で f
40〜45クラリネット、ヴァイオリンのこだまが続き、ppp で消えていく(原曲は、ここから中間部へ進む)

第2楽章のうち、「家路」の旋律が歌われる前半(1〜45小節)。旋律は、Brandon Amaro 浄書の総譜(パブリックドメイン)から入力し、Simrock 社の初版(1894年)と照らし合わせた。ピアノ伴奏は、管楽器の和音と弦楽器をまとめた編曲