藤舎の紋 藤舎名玄TOSHA MEIGEN ― 西洋音楽の一覧へ
WESTERN MUSIC ON SHINOBUE

月の光Clair de lune

Gabriel Fauré(1845–1924) ガブリエル・フォーレ
Clair de lune (Menuet), Op. 46 No. 2 / 月の光(メヌエット) 作品46の2

月の光の絵
アントワーヌ・ヴァトー『シテール島への巡礼』1717年
作曲
1887年(1888年に出版)
原曲の編成
歌とピアノ(歌曲)。1888年に、歌と管弦楽の版も作られた
詩
ポール・ヴェルレーヌ「月の光」(詩集『艶なる宴』1869年より)
調・拍子
変ロ短調・4分の3拍子・Andantino quasi Allegretto(歩くより少しゆっくり、ほとんど軽やかなアレグレットのように)
この楽譜
Pierre Gouin 校訂(Les Éditions Outremontaises、IMSLP、CC BY-SA 4.0)から入力。笛は歌の旋律を吹き、歌が休む前奏・間奏・後奏ではピアノの右手の旋律を吹く

楽譜

三本半調子・四本調子・四本半調子(古典調)の笛の運指で書いています。原曲と同じ変ロ短調で、1オクターブ上を吹きます。×の運指は30か所です。一 の高さが近い四本調子・四本半調子でも、同じ指で吹けます。笛の高さは気温や湿気で変わるので、季節やその日の笛の調子によって、伴奏と合う笛を選んでください。小さな数字は、伴奏に合わせるときのメリ・カリの目安です(実測した三本半調子の値。笛によって前後します)。ピアノやギターの伴奏は、原曲のままの高さ(A=440Hz)で、そのまま合わせられます。

楽譜 1ページ目楽譜 2ページ目
⎙笛の楽譜(PDF)A4・2ページ ⎙ピアノ伴奏付きの楽譜(PDF)A4・4ページ ⎙ギター伴奏付きの楽譜(PDF)A4・4ページ ⎙標準の運指(一=ド、八本調子前後)の楽譜(PDF)A4・2ページ ⎙曲目解説(PDF)印刷して、楽譜に添えて
運指の読み方
一 二 三 … 七
呂音(りょおん。低い音)
1 2 3 … 7
甲音(こうおん。一段高い音)。呂と同じ指で、息を強めます
点の付いた 2・3、8
大甲(だいかん。さらに高い音)。8 は大甲のド
数字の右上の ×
半音下げる指づかい(穴の一部を塞ぐ)。塞ぐ量は運指表をご覧ください
赤い ↑ ↓
その音だけ1オクターブ上げて/下げて吹く(笛の音域に収まらない音)
筒
筒音(すべての穴を塞ぐ)

お稽古用の音源

伴奏に合わせて吹くための、コンピュータで鳴らした音源です。「笛の旋律入り」で旋律を覚え、「伴奏だけ」で合わせて吹いてみてください。高さは A=440Hz で、このページの楽譜と同じ調です。三本半調子・四本調子・四本半調子の笛なら、楽譜の運指で、音源に合わせてそのまま吹けます(音源の笛の旋律は、1オクターブ下で鳴っています)。楽譜の繰り返しも、そのとおりに演奏しています。

音源
笛の旋律
速さ
合う笛三本半調子・四本調子・四本半調子(古典調)一 がラ♭(=ソ♯)に近い笛。季節によって選ぶ
この音源を保存(MP3)

音源は、MuseScore Studio の音色(Muse Sounds)で、楽譜から作りました。藤舎名玄の演奏ではありません。

作曲者

ガブリエル・フォーレは、南フランスのパミエに生まれました。9歳でパリの宗教音楽の学校に入り、そこでサン=サーンスにピアノを習って、生涯の友となりました。長くマドレーヌ教会のオルガニストを務め、のちにパリ音楽院の院長となって、ラヴェルらを育てています。

生涯に100曲を超える歌曲を書きました。『月の光』は40代のはじめの作品で、フォーレの歌曲が新しい段階へ進んだことを示す一曲とされ、フランス歌曲を代表する作品としてよく歌われています。

曲の成り立ち

1887年、ヴェルレーヌの詩「月の光」に曲を付けたものです。友人で画家の、エマニュエル・ジャダンに献呈されました(ジャダンはピアノも上手でした)。翌1888年には、ポリニャック公妃のすすめで歌と管弦楽の版も作られ、国民音楽協会の演奏会で初演されています。

この管弦楽の版は、のちの1919年、フォーレの劇の音楽『マスクとベルガマスク』の中にも入れられました。

なお、ドビュッシーのピアノ曲『月の光』(ベルガマスク組曲)とは別の曲です。ドビュッシーも同じヴェルレーヌの詩に歌曲を書いています。

詩と曲調

ヴェルレーヌの詩集『艶なる宴』は、18世紀の画家ヴァトーが描いた、仮面をつけた人々が庭園で楽しむ「雅宴画」の世界に想を得ています。「月の光」では、恋人の心を、仮面の人々がリュートを弾き踊る庭にたとえます。人々は楽しげに歌いながら、どこか悲しげで、その歌は月の光に溶けていく。静かで美しい月の光は、木々の鳥を夢見させ、噴水をうっとりとすすり泣かせる――という内容です。

フォーレは、この古風な宴の情景を、ピアノの「メヌエット」(18世紀の上品な3拍子の舞曲)で描きました。ピアノは前奏から、歌とは別の、それだけで一つの曲になるような旋律を弾き続け、歌はその上で、語るように静かに入ってきます。二つの旋律が重なって進むのが、この曲のいちばんの特色です。

後半「静かな月の光」からは、ピアノが分散和音に変わり、明るい変ト長調の響きの中で、月の光がさざ波のように広がります。最後は前奏のメヌエットが戻り、静かに終わります。

曲の流れ

小節の番号は、このページの楽譜の小節番号です。

小節内容
1〜11ピアノだけの前奏。メヌエットの旋律が、p で上品に歌われる(笛はこの旋律を吹く)
12〜16歌が入る。「あなたの心は、選ばれた景色」。ピアノはメヌエットを続ける
17〜23「リュートを弾き、踊り、風変わりな仮装の下で、どこか悲しげに」。ピアノは和音を刻み、高まっていく
24〜25ピアノの短い間奏(笛はピアノの旋律を吹く)
26〜36メヌエットが戻る。「短調で、勝ち誇る恋と気ままな暮らしを歌いながら、自分の幸せを信じていないよう。その歌は月の光に溶ける」
37〜38ピアノが分散和音に変わり、景色が移る
39〜47「静かな月の光、悲しく美しい。木々の鳥を夢見させ」。変ト長調の分散和音の上で、espressivo e dolce(表情豊かに、やさしく)
48〜55「噴水をうっとりとすすり泣かせる、大理石の像の間の、すらりと高い噴水を」。少し高まって静まる
56〜61後奏。メヌエットが戻り、静かに消えていく

Pierre Gouin 校訂(Les Éditions Outremontaises、IMSLP、CC BY-SA 4.0)から入力。笛は歌の旋律を吹き、歌が休む前奏・間奏・後奏ではピアノの右手の旋律を吹く