里の雁金さとのかりがね
作詞者・作曲者・初演年不詳 目次の題名「里の雁がね」、本文の題名「里のかり金」

大坂難波を舞台に、雁金五人男の侠客ぶりを勇ましく歌い起こし、四つ橋・八つ橋の地名尽くしを経て、廓の仲の町の情に転じる小品。「雁金組」「くろ船組」は上方の侠客もので名高い雁金文七ら五人男による。他の曲と異なり『徳川文芸類聚』所収の『歌撰集』による。
あらすじ
難波の——難波堀江に名も高き、五つ連れたる雁金組よ。喧嘩か、顔よ顔よ、くろ船組よ。無理が通らば、のけのけ、のけのけ。夜は何どきぞ、四つ橋を回らば、ちょうど八つ——八つ橋の、見交わす見交わす顔。花咲いたり花咲いたり。長刀、東男の出で立ちばえ。色の仲の町、君ならば、真っ先に命を揚屋入り。
詞章と現代語訳
難波のエなにはほり江に名もたかき、五つつれたるかりがね組よ、喧嘩かをかをくろ船組よ、むりが通らばのけのけのけのけ
難波の——難波堀江に名も高き、五つ連れたる雁金組よ。喧嘩か、顔よ顔よ、くろ船組よ。無理が通らば、のけのけ、のけのけ。
夜は何どきぞ四つ橋をまはらばてうど八つ橋の見かはす見かはすかほ、花さいたり花さいたり、長刀あづま男のでたちばへ、色の中の町君ならば、しんぞいのちをあげやいり
夜は何どきぞ、四つ橋を回らば、ちょうど八つ——八つ橋の、見交わす見交わす顔。花咲いたり花咲いたり。長刀、東男の出で立ちばえ。色の仲の町、君ならば、真っ先に命を揚屋入り。
この曲は詞章の出典が他と異なる。『徳川文芸類聚』第十 俗曲下所収『歌撰集』の本文(著作権消滅)により、繰り返し記号は読みやすく展開し、合方の指示は省いた。原典は目次の題名を「里の雁がね」、本文の題名を「里のかり金」とする。
原典は総かな書きのため、読みやすさを考えて漢字を当てた。ふりがなが原典の仮名である。
「雁金組」は上方の侠客、雁金文七を頭とする五人男。「くろ船組」も同じく侠客の組の名で、両者の争いは芝居・浄瑠璃に取られた。「五つ連れたる」は五人男を指す。
「難波堀江」は大坂の堀江。「四つ橋」は堀江に架かる名高い橋で、四つ(夜十時ごろ)の時刻に言い掛ける。「八つ橋」も同様に八つ(夜二時ごろ)に掛けた地口である。
「仲の町」は廓の目抜き通り。ここは大坂新町の廓を指すと見られる。「揚屋」は遊女を呼んで遊ぶ店。
「しんぞ」は「真っ先に」の意と読んだが、新造(若い遊女)を掛けるかもしれず、確かめられていない。
作詞者・作曲者・初演年は原典に記載がない。流儀・稽古本によって仮名遣いや字句にも異同があるため、演奏の際はお手元の稽古本と照合されたい。