曽我祭躍づくしそがまつりをどりづくし
荻江節 作詞者・作曲者・初演年不詳

曽我祭の吉日に、京や大坂の名だたる踊りの名を次々に寄せてゆく踊り尽くし。花の都の町踊りに始まり、松坂踊り・白人踊り・盆踊り・花見踊り・伊勢踊り・鹿島踊りの笠踊り・手踊り・嵯峨踊り・祇園踊り・お国歌舞伎の朝踊り・葛西踊りの歌念仏・菩薩踊り・題目踊り・雨乞いの踊り・小町踊りと数え、「さらりと柳にやらしゃんせ」の囃子を三度はさんで、軒の灯籠踊りで都へ納める。『徳川文芸類聚』所収の荻江節正本による。
あらすじ
今日は吉日、曽我の両社の神事とて、めでたぐ、かしこ。山車、売り屋、花田、獅子出し。思い思いの神いさめ、踊り尽くしを杜若。花の都の町踊り。千代の始めのひと踊り。松は松坂踊り、越、さいさい、さあ、やっとせ。白人踊り、盆踊り。なりよし、振りよし、み吉野の花見踊りの面白や。さいな、さいな、さあ、やっとせ。さらりと柳にやらしゃんせ。わしもお前も伊勢踊り、鹿島踊りの笠踊り。夏は屋形の手踊りや。見にきそ踊り、嵯峨踊り。紫帽子をしゃんと着て、祇園踊りのしおらしや。お国歌舞伎の朝踊り、葛西踊りの歌念仏。菩薩踊りに打つ太鼓。題目踊り、雨乞いの踊りに濡れしも理りや。小町踊りと褒めらるる。軒の灯籠、踊り都へ。
詞章と現代語訳
けふはきち日そがのりやうしやのじんじとてめでたぐかしこだしうりやはなだししだしおもひおもひの神いさめおどりづくしをかきつばた
今日は吉日、曽我の両社の神事とて。「めでたぐ、かしこ」。「だしうりやはなだししだし」。思い思いの神いさめ、踊り尽くしを杜若。
花のみやこの町おどり千代のはじめのひとおどりまつはまつざかおどりこへさいさいさあやつとせ
花の都の町踊り。千代の始めのひと踊り。松は松坂踊り、「こへさいさい」、さあ、やっとせ。
はくじんおどりぼんおどりなりよしふりよしみよし野の花見おどりのおもしろやさいなさいなさあやつとせ
白人踊り、盆踊り。なりよし、振りよし、み吉野の花見踊りの面白や。さいな、さいな、さあ、やっとせ。
さらりとやなぎにやらしやんせ
さらりと柳にやらしゃんせ。
わしもおまへも伊勢おどりかしまおどりのかさおどり夏はやかたの手おどりやさいなさいなさあやつとせ
わしもお前も伊勢踊り、鹿島踊りの笠踊り。夏は屋形の手踊りや。さいな、さいな、さあ、やっとせ。
見にきそおどり嵯峨おどりむらさきばうしをしやんと着てぎをんおどりのしほらしやさいなさいなさあやつとせ
「見にきそ」踊り、嵯峨踊り。紫帽子をしゃんと着て、祇園踊りのしおらしや。さいな、さいな、さあ、やっとせ。
さらりとやなぎにやらしやんせ
さらりと柳にやらしゃんせ。
おくにかぶきのあさおどりかさいおどりのうたねぶつぼさっおどりにうつたいこさいなさいなさあやつとせ
お国歌舞伎の朝踊り、葛西踊りの歌念仏。菩薩踊りに「うつ太鼓」。さいな、さいな、さあ、やっとせ。
だいもくおどりあまごひのおどりにぬれしもことわりやこまちおどりとほめらるゝさいなさいなさあやつとせ
題目踊り、雨乞いの踊りに濡れしも理りや。小町踊りと褒めらるる。さいな、さいな、さあ、やっとせ。
さらりとやなぎにやらしやんせ
さらりと柳にやらしゃんせ。
のきのとうろうおどりみやこゑ
軒の灯籠、踊り都へ。
この曲は詞章の出典が他と異なる。『徳川文芸類聚』第十 俗曲下所収『荻江節正本』の本文(著作権消滅)により、章句の記号は原典のまま段の頭に残し、繰り返し記号は読みやすく展開した。繰り返し記号はいずれも直前の語句を繰り返すものとして展開したが、どこまでを一語と見るかはこちらの判断による。
原典は総かな書きのため、読みやすさを考えて漢字を当てた。ふりがなが原典の仮名である。
曽我祭は江戸の芝居町で、曽我物の狂言の当たりを祝って行われた祭。「そがのりやうしや」は曽我の両社で、曽我兄弟を祀る社を言う。
踊りの名を寄せる。町踊り・松坂踊り・白人踊り・盆踊り・花見踊り・伊勢踊り・鹿島踊り・笠踊り・手踊り・嵯峨踊り・祇園踊り・朝踊り・葛西踊り・菩薩踊り・題目踊り・雨乞い踊り・小町踊り・灯籠踊り。
「おくにかぶき」は出雲の阿国が始めたという歌舞伎踊り。「うたねぶつ」は歌念仏、念仏に節をつけて踊るもの。
「さらりとやなぎにやらしやんせ」は囃子詞で、三度くり返して段を区切る。
語義の定めがたい語は推測で埋めず原典のまま残した。「めでたぐかしこ」、「だしうりやはなだししだし」(山車・売り屋・花田・獅子出しかと見たが切り方が定めがたい)、「こへさいさい」、「見にきそおどり」、「うつたいこ」。
作詞者・作曲者・初演年は原典に記載がない。流儀・稽古本によって仮名遣いや字句にも異同があるため、演奏の際はお手元の稽古本と照合されたい。